―　個展開催に寄せて―

中学３年生の夏、啓君にとってまったく初めての「個展」が開かれてから、はやくも４年が経っていました。

初めての｢個展｣では、小学２年生の頃から描いた絵が順番に展示されていました。その絵画空間を体感した時、啓君の絵を描こうという気持ちが一層高まっていったように感じられます。

画面には、透明絵の具やクレパス、蝋、アクリル絵の具、ガッシュなど、いろんな画材を使った効果、又、その偶然性が織り成す表現が見られ、大人の心どこかに仕舞い込まれていた新鮮な驚きを呼び覚ましてくれるようでした。　

第一回の個展の後、中学を卒業し、高校への入学と卒業があり、この４月には社会人への第一歩を踏み出しました。その間にもほぼ途切れることなくアトリエに通って制作に励んでいました。

アトリエでの制作は、啓君とモチーフ（描く対象）との直接的な対話を表現する場でもあります。啓君の最近の画面は、初めての個展に見られたような、画材がつくり出す偶然性を含んだ画風から、心象を直接的に表現する画材へと移行してきています。ガッシュを主体的に使った、その力強い表現はさらなる?たくまざる軌跡?を拓いていくことでしょう。

啓君とモチーフと画材がつくり出すリズムを大切にしながら、また新たな心象の世界を見せてくれたらいいな、と思っております。

今回は、数多く描かれている作品の中から近作を選んでの展示となっています。これからも、きっと、ずっと描き続けていく啓君の「たくまざる軌跡」をどうぞごゆっくりご高覧下さい。

アトリエ學林　造形アトリエ主宰　　　坂　幸子