個展開催に寄せて

啓君がアトリエに通い始めたのは、アニメ「ドラえもん」 に夢中だった頃

ドラえもんの”お絵描き歌”を口ずさみながら

スケッチブックはドラえもんで一杯だった

「啓君、絵を描こう!」

たっぷりと絵の具を含んだ筆を画面全体に躍らせて自分の画面を創り出す迄 啓君の目と私の視線は何度もすれ違い はぐれ ぶつかりあうこともあった

寒い雪の朝は ふっくらとしたほほをバラ色に染めて

元気にアトリエに走り込んでくる

この場 この一瞬 真っ白い画面に描き出される色 線 

フォルムは 誰にも描き出すことはできない

啓君の時空そのものの表現だ

最近かなり早いリズムで筆を運ぶ 啓君の心象の世界が画面にあふれる

すごい集中力だ

啓君が生み出した無心な創作の軌跡をここで一度振り返えって

次なるステップへと踏み出したい



アトリエ學林

造形アトリエ主宰 坂幸子